鳩の峰
『鳩の峰』は栃木県佐野市と足利市の市境にある里山です。国道293号を佐野市側から行くと、越床トンネルに入る少し手前、右に佐野ゴルフクラブがある方向の直ぐ上に三角形の形をして見えます。標高は305mほどです。山名は地形図に載っていません。地元の方は「鳩の峰」と言っているようですが、私の山仲間の間ででは、「鳩峰」と呼んでいます。
山頂には、地元の厚い信仰を示すような大きな神社がありました。しかし、今ではその面影を残すだけです。
ゴルフ場のクラブハウスに入る坂道の手前に、鳩峰に向かって石の鳥居が建っています。石段がありますが、上るとこの先は広々としたゴルフ場の芝です。私有地ですから、この先にづかづか入っていくことはできませんね。もしここから登ろうとするなら、ゴルフ場から特別に許可をもらわなければなりません。
この山には、佐野市赤見から足利市樺原に抜ける『関東ふれあいの道』の塩坂峠から入るか、293号線旧道の越床峠から入ることになりますが、ふつうは両者を結ぶ縦走路として登るのでしょう。ここを歩くハイカーは少なく、晩秋から初夏にかけて静かな里山歩きを楽しむことができるところです。
今回は、「両毛考古学研究会」の調査を兼ねていたので、ゴルフクラブさんから許可を頂いて、昔の神社参拝道を登りました。九十九折れに急な斜面を刻んで、はぁはぁしながら30分ほどで山頂につきます。冬枯れの登山道にはコナラやカシワの落ち葉が積もっていますが、昔を偲ぶ物は見当たりませんでした。
かつてはここにかなり大きなお社があったことが、その礎石からも分かります。私が数年前に初めて訪れたときは、屋根が崩れ落ちた半壊というよりも全壊状態で、中を覗くと大きな絵馬やなにやらの神像があったりして、なんだか異次元の世界に来てしまったような不気味な雰囲気でした。それが今ではきれいに取り片づけられて、小さな石祠が置かれています。今でも御酒が供えられていたりするので、氏子とか信仰者の参拝があるのでしょうね。
山頂から越床峠方面に下る南斜面は45度もあろうかと思われ、かなりの急傾斜です。トラロープが張ってありますが、かなり古いものです。
尾根道に出る途中に動物の糞がありました。その中に木の実と思われる大きな種が消化されずにありました。この山塊には熊や猪も生息していますが、これはどなたのモノでしょうかねぇ。
この時期、紅葉はすでに終り枯葉も落ちて里山は見通しが良くなっています。その中でドウダンツツジの鮮やかな紅葉を見ました。それを再現しようと写真編集を試みてみましたが、うまくいきませんです。こういうのはやはり現物を見て、その瞬間の感動を味わうしかありませんね。それが山歩きの醍醐味かもしれません。
ヤブコウジの赤い実も、ちょいと食べてみたくなるほど綺麗ですよ。尾根道の斜面にありました。
ここは、私達が『賽の河原』と呼んでいるところです。越床峠に出るには20分ほどの所でしょう。おそらくは昔の峠があった所で、東西に下りる道跡があります。写真では落ち葉に埋もれて見えませんが、全体が片手で持てるほどの小石ばかりが堆積した丸い小山になっていて、上部に石祠が置かれています。木々の茂る頃に訪れると、かなり薄暗くて、不思議と草も木も全く生えていない石ばかりの場所です。こんな所は縦走路中にここだけです。
今回は「調査行」でもありありますから、越床峠に出ず、東に道跡をたどり藪道を覚悟で下山してみました。
道跡は微かですが確かにあります。私の推理では、この山道こそがかつての越床峠道だったのではないか、と思うのですが本当のところはどうでしょうね。山藤のジャングル地帯がありました。右の写真は別の個体ですが、右側の写真の藤蔓は径20cmはあろうかと思われる見事なものでした。こんなのに巻きつけられる木はたまったものではないでしょうね。
土が堀起こされている箇所もいくつかありましたが、猪の仕業でしょうね。
この道跡は下るにつれ分からなくなりました。幸いに冬枯れの斜面でブッシュはありませんでした。一気に斜面を突き抜けて下ると、越床トンネル入り口の上部に出ました。今回の山歩きはこれで終了です。このあとは293を佐野方面に歩き、里山の山並みを眺めながら、車を止めた出発地の石鳥居に戻りました。
尾根道はところどこで展望がありますが、もっとも良い場所のひとつが、私達が昼食をとった石祠のあるピークです。今日は曇りでイマイチですが、山並みの向こうに大小山がちょっと顔を見せています。
山仲間の林氏から、かつて山頂にあった鳩峰神社の写真をご提供頂いた。取り壊される前の様子が分かる貴重な一枚である。かなりの規模であったことも、お分かりいただけると思う。