後袈裟丸山(郡界尾根コース)
群馬と栃木の県境にあって足尾山塊南端の位置に、袈裟丸(けさまる)という変わった名前を持つ美しい連峰がある。ふつう袈裟丸山と言うと1等三角点のある前袈裟丸山(まえけさまるやま・1878m)を指すようだが、いうならば袈裟丸連峰であり、南から順に見ると小丸・前袈裟・後袈裟・中袈裟・奥袈裟といった峰峰からなり、北は庚申山・皇海山へと続いている。
今回は後袈裟丸山(あとけさまるやま・1908m)に、群馬の利根郡と勢多郡の郡境にある『郡界尾根』から登った。関東地方南部を前日に通過した台風4号の影響が残り良い天気ではなかったが、盛夏の強い日差しに比べてみれば、むしろ、登りやすい天候だったといえるかもしれない。また、この日午前10時13分頃新潟県中越沖地震が発生し、それを山中で確認したのも印象に残る山行となった。合掌。
国道122号線から利根郡利根村に抜ける林道に入る。小中大滝から上は未舗装部分が多く、落石もあったりして、揺れる車中では緊張気味であったが、登山口に9時30分頃無事到着。
5台くらい駐車できるスペースがあるが、先行車が1台あるのみ。我々は今回6人のメンバー。身支度をしていると、東京ナンバーの車で、中年の単独者が到着。挨拶を交わすと身軽に登って行きました。
ツツジや石楠花の時期は過ぎているし、台風の影響もあるだろうしで、今日は登山者も少ない静かな山歩きになるでしょう。
←こんなふうに登山道入り口はいいムードですが・・
直ぐに階段道になります→
階段がずっと続きます。これって、体があったまる前ですから、けっこう疲れるんですよね!
登り始めて10分。息が切れますねぇ。そんな時、花がありましたぁ。こうなりゃ、撮影にかまけて密かに休憩です♪
これは「イチヤクソウ」です。漢字では「一薬草」と書きますが、漢方薬になるようです。
階段道はずうっと続きます。良く言えば、大変にお金をかけて整備してるってことですが・・でも、ハイカーにとっては賛否両論でしょうね。
登り始めて約30分、郡界尾根に出ました。ここの標識は破壊されています。もちろん、こんなことをするのは熊さんですね。木製の標識に塗ってある塗料が、彼(彼女)の本能をいたく刺激するようです。なぜなら、プラスチック製のモノは齧られません。木製のはほとんどこうなります。あとで出てくる標識には、熊さんの仕業である証拠があります。
『八重樺原』はなだらかで、景色も良くたいそう気分のよいところです(たぶんネ)。 今日はご覧の通り霧が出ていて展望は全くありません。
しばらくこんな尾根道を、テクテク歩くように登ります。
シラビソ(たぶん)の枯れている立ち木に、ゼラチン質の黄金色のキノコが付いていました→
図鑑で調べたら「アカキクラゲ」というらしいです。 これは食用にはしないようです。
『つつじ岩』と彫られている標石がありました。でも、岩らしいものは見当たりません。ガイドブックにも書いてないのですが、いったい何?
登山道にシャクナゲの木が見えてきました。するとまもなく、古い石祠が登山道の右脇にあります。
石祠があると、たいていは建立年が彫られているので、私は興味深く確認したりするのですが、今回は何故か失念しました。
それで、増田宏著「袈裟丸山」を見てみると次のように記述されています。『標高一五〇〇b付近に石の祠がある。この石祠は小中山一帯の山林を所有していた松島与左衛門という人が山仕事の安全を祈願して江戸時代末期に造立した山神で、袈裟丸山の信仰とは関連はない』そうです。
この祠には右の道標があり、登山口から2.7km、後袈裟山頂まで1.7km地点です。時間は11時20分頃。山頂まで、あと1時間半はかかりそうです。
八重樺原のはずれにある標識も、齧られてます。黒い毛が残されてますが、熊さん以外には考えられませんよね!
尾根道はまた樹林帯の中に入っていきます。私はこういうなだらかな道だけだったなら、いくらでも歩けるんですが・・だんだんと登山道らしい雰囲気になってきます。
更に40分後、12時頃の様子です。かなり傾斜がきつくなってきましたが、山頂はまだまだ先です。
この頃になると先行隊と、最後尾はかなり距離が開きました。もちろん、最後尾は私です。
フツウのハイキングクラブなら最後を行くのはチーフリーダーと相場が決まってますが、私たちの場合は単に早いモンと遅いモンがいるだけ。こういう場合に備えて、前々からトランシーバの類が欲しかったのですが、今回は持参しているのですぞ!
これが、なかなか具合がよろしい。「シャクナゲが咲いていますよ〜ドウゾ〜」なんてね。
まだ石楠花(アズマシャクナゲ)が咲いてとは、全く期待していませんでしたから、先行隊から花の情報を聞き楽しみで登りました。この花を見て急登りをこなして、山頂まで15分という情報も無線で得ています。腹が減っても、もう少しの頑張りだと自分を励まして登りましたぁ。
午後1時ようやく山頂到着しました。もともと山頂は展望はないのかもしれませんが、いまにも雨が降ってきそうな気配の霧の山頂でした。私はピークハンターではありませんが、やはり山頂に登れば、ジワッとした喜びがありますね。
それはともかく、腹を満たさないと。昼食はコレ→とコンビニのおにぎり。標高が高いから気圧が低いのですね。フタの部分がパンパンになってます。
↑は奥袈裟方面。→は前袈裟方面です。前袈裟丸山との鞍部には、八反張のコルという両サイドが切れ落ちている難所があります。というか、私は行ってないのであるそうだというべきですが、「通行禁止」を告げる注意板があります。しかし、縦走するには通らざるをえないですからねぇ。だからでしょうか、「禁止しま・」で文字がきえてますよ(^_^;)
雨がぱらつき出しました。メシも食ったし長居は無用。1時40分下山開始です。モヤった雰囲気がとても幻想的です。
白樺の幹は、枝が落ちたところは「へ」の字というかコケシの「め」というか、黒く樹肌に残るのが特徴です。ところが、こんな模様のがありました。まるでネコの目を縦に並べたようで面白いですよね。
下山は途中1回休憩しただけで、ほとんど休みなく下りて来ました。八重樺原上部でまもなく3時です。ここで最後の大休止です。いつものようにマルさんがコーヒーを入れてくれます。
熱いコーヒーを飲んだあとは、↑こんな感じや
←こんな雰囲気のところをテクテク下山。登山口まで最後の1時間のガンバリです。
最後の長い階段道では、さすがに膝に疲れを覚えました。登山口に到着は4時少し前でした。今回の山行は展望には恵まれませんでしたが、かえって、深山の気配を満喫できました。同行メンバーからもこんなメールがきました『・・先日の山歩きはとてもよかったですねえ。幽玄で、ミステリアスで、夢想するのには格好でした(何を?誰と?などとは聞かないでください)・・』ですって!
帰路の林道途中にある、「小中大滝」に寄りました。駐車場も整備されています。前日までの台風の雨でしょうね、谷川の水量が豊富です。
滝の展望台へは、駐車場から木橋を渡りいったん向いの尾根に上がります。上部の小さなトンネル通路を抜けると、突然、目の前に45度の傾斜があろうかと思われる風変わりな吊り橋「けさかけ橋」に出ます。展望台はこの吊り橋を下ったところにあります。
吊り橋ですから揺れるのですよ! 私はジェットコースターとかその類はキライですから、この橋も苦手ですねぇ。でも、行かないと大滝がちゃんと見られないだろうから、揺れるのもガマン。
滝は右手の小中川本流から轟音をあげて落ちています。落差は50m位です。
展望台からは緑が多いせいか、滝つぼは見られませんでした。広葉樹ですから秋の紅葉とかも美しいでしょうね。
← 吊り橋は下から見上げるとこんな感じです。急だって分かりますか?